Kimlahimvic’s Diary

Rock, Book, Beer, and Soccer などのとりとめのない話

ANN「お笑いウィーク」での若い世代の新鮮な面白さに、なんだか考えてしまった話

先週はニッポン放送が「お笑いラジオスターウィーク」と銘打ち、

オールナイトニッポンとゼロが全て芸人、という1週間でした。

 

そのため私の好きな『佐久間宣行ANN0』はなかったけれど、

代わりに登場した芸人の単発の番組が大変面白かったので、

記録しておきます。

 

『マヂカル・ラブリーANN0』

正直、Mー1の決勝や敗者復活戦で見ていたときはほとんど印象に残っていなかったけれど、

最近ゴットタンや勇者ああああで野田クリスタルさんを見かけて、

その異様な存在感、というか異物感に遅まきながら私も薄々気付き始めていた。

 

特にあのマッチョな体に、

ゲームオタクかつ、プログラミングで自作ゲーム(野田ゲー)を作っているという

ミスマッチな特技が同居している、

互いにトゥーマッチなものが引っ張り合っている気持ちの悪いエネルギーが漲っている感じ。

 

そして意外にも抑制された、達者な喋りでそれらを無理やり統合している感じ。

 

しかしそのどれもが一般受けしていない、鬱屈とした雰囲気。

 

それらにピントが合い始めた私は、野田クリスタルさんの面白さにハマってしまいました。

 

芸人(芸人ラジオ)は実力はあるけど売れてない鬱屈としたタイミングが、

最も面白い時期だと思いますが、彼らはまさにそんな時期でしょうか。

 

ラジオ的には2人の声が明確に違うのも聞きやすくて良いです。

 

アルピー酒井さんのエピソードトークが転がっていって、

最後まで膨らんでいく展開も深夜ラジオの王道でした。

 

今年聞いた芸人ラジオでは、彼らや鬼越トマホーク、ぺこぱが面白かったです。

(野田さんも言ってましたが)

 

この3組には次の世代の深夜ラジオを担って欲しいなと思います。

 

 

 

『コント村 ANN0』

コント村とはゾフィー・上田、かが屋・加賀、ハナコ・秋山、ザ・マミィ・林田からなる

コントユニットだそうです。

 

これまたゴットタンでその存在を知りましたが、

第7世代はもう自分の世代ではないという気遅れ感があり、

それぞれのコンビについてあまり詳しく見たことがありませんでした。

 

内容についてはとにかく短いコントを何本も流す、という構成で、

トークの間も惜しいという感じでコントを詰め込んでました。

 

これもゴットタンで確かニューヨークが言ってたことですが、

「第7世代とその上の世代の違いは、頑張ってる姿を見せるかどうか」

だそうです。

 

まさにこの番組で彼らは、自分たちがどれだけコントが好きか、

どれだけコントを頑張って書いてきたか、そしてコントを演じるのがどれだけ楽しいか、

を恥もてらいもなく表明しています。

 

それは「頑張ってるところを出すのが恥ずかしい」という暗黙の了解がある、

上の世代の芸人(私もこちらの方が共感出来てしまう世代ですが・・)

とは明らかに違うスタンスです。

 

 

今の20代以下の若い世代は、自分の好きなものがマニアックであったり、

オタク的なものであることに我々世代ほど抵抗がないように思います。

 

むしろ自分がどれだけその一般受けしない対象に没入し、熱中しているか、

が大事であり、そうであればあるほどカッコ良い、的な風潮さえ感じる時があります。

 

オタクの一般化とでも言えるのでしょうか。

オタクであることは青春の一要件でさえあるようです。

 

それについてはいい点も悪い点もあると思います。

どちらが優れているという話ではないです。

 

実際、コントそのものは世代の違いを感じることなく、

どれも面白かったです。

 

この番組はまさに、そんな若きコント・オタクたちのエネルギーが、

ストレートに投入された番組でした。

 

 

『フワちゃん ANN0』

最後はフワちゃんです。

 

フワちゃんはちょっと前にYoutubeで知って以来、すぐにファンになりました。

 

最初にセブ島に英語の短期留学に行く回を見たのですが、

意外に英語がうまいフワちゃん。

 

それはさておき、当然ラジオも型破りな放送に。

 

フリートークがないと言ってわめきだす、

曲をかけたら一緒に歌い出す、

そのくせCM明けのジングルや架空CM?は念入りに作り込んでいる、など。

 

めちゃくちゃな放送でしたが、なぜか終わった後、

「これは面白かった!」となりました。

 

なぜか。

多分フワちゃんは確信犯で、自信を持ってめちゃくちゃしているからです。

 

なぜ確信的なのか。

それはフワちゃんがある世代の、

ある趣向の人たちの「ノリ」を確実に代弁しているからです。(八王子のギャル?)

 

フワちゃんのノリが既存のテレビやラジオより面白い!と思える層が確実におり、

フワちゃん自身も彼ら彼女らが自分の後ろにいることに自覚的だからこそ、

自信を持ってあのノリを続けられるのだと思います。

 

「つまらないのはあんた達。うちらは最高に面白い」

 

と全身全霊で言ってるように思えます。

 

私はフワちゃんのノリがドンピシャな層ではもちろんありませんが、

自分達が面白いと思うことを確信的に貫き通すフワちゃんを傍目に見ているのは爽快で、

ワクワクしてきます。

 

フワちゃんの主戦場は元々はYoutubeでしたが、

Youtubeの視聴環境というのは、一家団欒のお茶の間の象徴であったテレビとは違って、

自分の部屋で、一人でスマホやPCに向かって見る、というのが多いと思います。

 

つまりYoutubeはそもそも寂しいのです。

 

だからこそ、あのフワちゃんの底抜けの明るさ、やかましさ、派手さが受け入れられたのだと私は思います。フワちゃんはYoutubeで見るとしっくりきます。

 

テレビのお約束に絡めとられずに、これからも頑張って欲しいです。

 

 

 

そんなこんなで3本立て続けに聞いたら、

若い世代のエネルギーに当てられてしまって、

東野やくりぃむ、漫才サミットのANNはなんだか聞く気が起きず仕舞いに

なってしまいました。。。

 

 

 

 

 

 

 

MANGA都市TOKYO展を見に行って、その後漫画を買って帰った休日

先日、久々に有給が取れました。

 

子供達も保育園、妻も仕事だったので、久々に1人でまる1日使える時間ができました。

 

何をしようか・・・

 

しばらく考えて、新国立美術館で開催されている、

『MANGA都市TOKYO展』を見に行くことにしました。

 

ちょっと気になっていたんですけど、赤ちゃん連れで行くわけにもいかず、

諦めていたんですが、行くなら今日しかねえ!

とすぐにチケットをゲット。

 

入場を制限しているとのことでしたが、めちゃくちゃ空きがありました。

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実際、広々としたスペースに人がまばらにしかおらず、

快適にみることが出来ました。

 

まず入って圧倒されるのが、巨大な東京のジオラマ

 

これを見たかったので、入ってすぐ8割満たされました。

 

展示はゴジラの昔から、日本のアニメ、特撮、ゲームなどに見られる「東京」が、

作品の舞台装置としてどのような役割を果たしてきたか、

また逆にそれらのフィクションが現実の「東京」のいろいろな場所の

イメージにどのような影響を与えてきたか、

というテーマが時系列的に展示されており、

東京のイメージや役割がどのように変わってきたかの変遷が興味深かったですが、

さらには現実の東京に対するフィクションの影響度がどんどん増しているという

逆転現象?も感じられ、東京という街(ひいてが日本全体)が、

もはやアニメに代表されるようなソフト、ポップカルチャー抜きには十分に語れない

存在となっていることを実感。

 

今後はピンポイントでローカルな場所であるほど、

舞台としての魅力が増し、ファンの愛着が湧く、という傾向が進みそうです。

 

かむろ坂やパルム商店街を舞台にしたアニメ出来ないかな。

 

 

 

最近のアニメやゲームには全くついていけてない私ですが、

この展示で、見てみたい作品がいくつもありました。

 

火要鎮』(大友克洋)、『秒速5センチメートル』(新海誠)、『機動警察パトレイバー』(押井守)、『千年女優』(今敏)などなど。

 

有名なやつばかりですね多分。

 

そもそも『AKIRA』も『エヴァンゲリオン』も『君の名は』もまともに見たことありません・・・。

 

20歳くらいから、どういうわけか活字表現の方が親しみやすくなっていき、

漫画を読まなくなってしまい、

そうしているうちに漫画・アニメ文化の成熟に全く取り残されてしまいました。

 

ラブライブ!』や初音ミクにも東京を巡る文脈があるとはつゆ知らず、

全く敬遠しておりました。非文化的態度と反省します。

 

 

 

 

反省したから、というわけではないですが、

帰りに立ち寄った下北沢ヴィレッジバンガードで、

黒田硫黄氏の短編集『きょうのカプセル』を見つけて購入しました。

 

黒田硫黄氏は漫画を読まなくなった私の、

数少ない(というか唯一の)新刊を追いかけている作家です。

 

特に短編集はハズレがなく、コラムや日記のような2ページくらいの漫画に至るまで、

隅から隅まで読み応えがあります。

 

氏の作品では『茄子』が最高傑作だと私は思いますが、

短編集も同じくらい好きです。

というより『茄子』は短編集をオムニバス映画的につなぎ合わせたもの、

という印象です。

 

今回はSF的な作品多めですが、日常がいきなりSF的展開に横滑りしてって、

荒唐無稽な世界に猛スピードで突っ込んでいきながら、

最後は人間のよくあるな感情、気持ち、機微みたいなものをさらっと感じさせて、

余韻を残して終わる、という黒田ワールドがきっちり展開されていました。

 

 

きょうのカプセル (ワイドKC)

きょうのカプセル (ワイドKC)

  • 作者:黒田 硫黄
  • 発売日: 2018/11/22
  • メディア: コミック
 

 

漫画のことをあれこれ考えたり、読んだりしているうちに休みの1日が終わりました。

 

 

 

 

 

 

ヨーロッパサッカー新シーズン開幕! リーズがプレミアに戻ってきた!

ヨーロッパのサッカーシーズンがついに始まりました。

 

今年は当然のことながらだいぶイレギュラーな日程で、

各リーグとも全チーム一斉に第1節を迎えられたわけではないようです。

 

そりゃそうですよね、なんたって今年は昨季(2019-2020シーズン)の終盤が

コロナの影響で丸々延期になってしまい、6月ごろにそ〜っと再開されたものの、

チャンピオンズリーグも例年のホーム&アウェイ方式をやめて、

準々決勝以降は決勝戦の開催地、リスボンに全チームを集めての全試合一発勝負、

しかも無観客、というレギュレーションでなんとか開催にこぎつけて、

勝戦が終わったのが8月23日、という前代未聞のイレギュラーっぷりだった。

 

例年ヨーロッパのサッカーは9月(一部8月半ば)に開幕し、

翌年の5月、遅くても6月初頭には終了、

その後、選手は移籍のドタバタを移籍期限最終日まで繰り広げたり、

イビザ島などのヨーロッパのバカンス地でめいめいのサマーバケーションを堪能したりする。

 

そのサマーバケーションが今年はなかった。

特にチャンピオンズリーグ準準決勝に残ったチームは。(ELも)

 

しかもコロナの第一波中、ヨーロッパのほとんどの国は厳しいロックダウンを行い、

サッカー選手は試合ができないどころか、チームが集まって練習することもできなかった。

 

家でトレーニングといっても限界があるだろうし、

7月に再開されたリーグやCL、ELを見ても、

どう見てもコンディションがピークじゃないだろう選手が

多かったような気がする。また、実際、怪我も多かった。

 

 

そんな状態のまま、しっかり休むことも、チームとしてじっくり練習することも

ままならないまま突入した2020−2021シーズン。

 

選手には怪我をしないようしっかり休んで欲しかったし、

もう少し慎重に再開した方が良かったんじゃないの、

という気持ちもあるにはあるけれど、

やはり主要リーグが続々開幕を迎えると、ワクワクしてしまう。

 

 

イングランド・プレミアリーグの開幕節、

昨年の王者リバプールに、昇格組のリーズ・ユナイテッドがいきなりぶつけられていた。

 

昨年のスカッドがほぼそのまま残り、なおかつ南野など昨季途中で入った新戦力も徐々に

フィットしつつあるリバプールに、今季17年ぶりに昇格したリーズはさすがに酷だろう、

と思ったが・・・。

 

 

リーズは降格する直前の2000年代初頭、一大旋風を巻き起こした。

 

 

リオ・ファーディナンドイアン・ハートハリー・キューウェルアラン・スミスといったイキのいい若手が次々に登場した。

 

それはまさに90年代、デヴィッド・ベッカムポール・スコールズライアン・ギグス

ニッキー・バット、ネビル兄弟などの若手が次々に台頭し、

ついには欧州の頂点に立った頃のマンチェスター・ユナイテッド

「ヤング・ガンズ」と呼ばれていたことを彷彿とさせるものがあり、

実際「ヤング・リーズ」と呼ばれたりもしていた。

 

一時はチャンピオンズリーグ準決勝まで進む躍進を見せるものの、

過剰な投資がたたり財政難に陥り、主力選手を次々に放出。

ファーディナンドやスミスはマンチェスター・ユナイテッドに移籍した)

 

2004年の降格を最後にプレミアの舞台に上がってくることはなかった。

 

 

そのリーズがようやくプレミアに戻ってきたのだ。

 

 

私が大学生だったあの頃のリーズのように、派手なメンバーではない。

しかし開幕戦のピッチに散らばり、開始の笛とともに猛然と走り出す11人を見て、

もう一つ重要な事実を思い出した。

 

 

彼らは2018年から、マルセロ・ビエルサ監督によって作られてきたチームということを。

 

 

フットボール界の奇人」

「戦術マニアで自宅に世界中の試合を記録したビデオが数万本ある」

「というか練習場の監督室に寝泊りしている」

 

など、数々の逸話で知られるマルセロ・ビエルサ監督は自他共に認める戦術マニアだ。

 

その偏狭的とも言える戦術へのこだわりっぷりと、

自らの戦術の完璧な遂行のためには選手にも組織にも会長にも一切妥協しない頑固っぷりで、

それがうまくハマれば無名な選手ばかりでもとんでもないチームを作ってくるし、

ハマらなければすぐに誰かと喧嘩して決別してしまう鬼才。

 

2010年の南アフリカW杯の時、彼はチリ代表を率いてベスト16に進出したが、

アレクシス・サンチェスビダル、イスラ、ボーセジュールといった若い選手たちが、

攻撃の際にどんどん人が後ろからボールを追い越して上がっていく新鮮なサッカーを見た

解説の山本昌邦さんが、

 

「このコンセプトをどうやって選手たちに理解させたのか、

どういう練習をして落とし込んだのか、全く想像できない。」

 

と仰っていたのを思い出す。

今のリーズはそんな一筋縄ではいかない男、ビエルサが2年かけて作ってきたチームなのだ。

 

 

そしてこの試合。

戦術には疎い私も開始10〜15分ですぐに気づいた。

フィールドの10人全員が完全なマンマークを行なっていることに。

 

プロというか大人の試合ではほとんど見かけない、全員マンマーク戦術。

小学生の試合でよくみるけど、それをトップレベルのプロ選手がやる目的って何なのか、

私には真意を図りかねるが、確実にリバプールの選手は戸惑っているようだ。

また、ボールを奪うと一気に後方の選手がボールを追い越して上がってくる動きも健在だ。

 

なんか攻守に過剰にダイナミック。

90分持つんだろうか、と心配しながらも、最高にスリリングだ。

知らない選手ばかりだったのにいつの間にか応援していた。

 

試合は点の取り合いになり、最後はリバプールがなんとか突き放して、

4−3で勝ったけど、誰もが思ったはずだ。

 

今年のリーズはひと暴れするぞ、と。

 

 

 

リーズがようやくプレミアに戻ってきた。

今季もヨーロッパサッカー、楽しめそうだ。

 

 

 

 

 

先週のラジオのSPウィークは久しぶりに面白かった。

先週のラジオのSPウィークは久しぶりに面白かった。

 

全体的に違う番組のパーソナリティーが他の番組にゲストで出たり、

他の番組のことを話したり、

と言った相互的なやりとりが多く、ダイナミックであったし、

スクランブル感があってワクワクした。

 

 

まずはやっぱり、火曜のTBS『爆笑問題カーボーイ』。

 

この2週前から田中がコロナ陽性のため休んでいて、

ウエストランドアンガールズがピンチヒッターを務めるスクランブル体制だったが、

SPウィークの先週はなんと同じJUNKの重鎮、伊集院光

 

大方の期待通りの暴走トークで、SPウィークを廃止したTBSラジオ社長の批判や、

神田伯山の悪口でエキサイトしていた。

 

お互いの触れて欲しくないところには触れずにはいられない、

因果なラジオスターの2人。

バッサバッサ斬り合って、お互いの返り血を浴びながら、

爽やかに笑っている、そんな刺激的な放送だった。

 

そしてその後27時からのニッポン放送creepy nuts ANN0』。

 

あ、ちなみにこれらの番組は全て、radikoのタイムフリーで後日聞いてます。

サラリーマンなんで。

 

まずは同じANNをやってる菅田将暉とこのラジオ番組で生まれた曲、

『サントラ』をミュージックステーションで披露したけど、

R指定が歌詞を間違えた話。

 

これはその前の週の『三四郎ANN』で「番組側に歌詞のテロップ間違えられてかわいそうw」

といじられていた。

 


Creepy Nuts × 菅田将暉 / サントラ【MV】

 

そこからのゲスト、オードリー若林。

DJ松永が尊敬してやまないラジオの先輩だ。

 

ちなみにcreepy nutsはオードリーの武道館ライブのときも、

ANNの企画の流れで『夜更かしの唄』を作っている。

 

今はANNの番組間コラボに欠かせない存在だ。

 

番組は意外にも若林のHIPHOPリスニング歴を真剣に語り合う場面もあった。

 

 

そして水曜深夜はニッポン放送『佐久間宣行ANN0』。

今、深夜ラジオの中で最も異彩を放っている番組ではないだろうか。

 

何しろ私のような、深夜ラジオを夢中になって聴くには少し歳をとってしまった、

アラフォー世代にドンピシャで刺さる内容ばかりなのだ。

さすがTVディレクターの佐久間さん、視聴者のことをよく分かっている。

 

今回は極楽とんぼ加藤浩次がゲスト。

ずっと前から駆け出しディレクター時代に極楽と一緒に作った番組で鍛えられたことや、

山本が事件を起こして謹慎になったとき、その番組がお蔵入りした際の

エピソードなどを語っていたので、この番組ファンとしては待ってました、の人選。

 

いつもは後輩や年下に向かって話すことが多い佐久間さんが、

この時はなんでもぶつけられる先輩に向かって、

思い切って本音をぶつけていく感じが新鮮だった。

 

木曜、TBS『ハライチのターン』。

先週、2人揃って病欠したおぎやはぎに代わって(小木さんが癌の手術、矢作さんがコロナ)

スポットで代打に行った2人。

 

その時の振り返りエピソードを語っていたが、その日の夕方に急遽連絡を受け、

出演することになったという。

 

この日の『おぎやはぎ メガネびいき』は出だしがトンツカタン・森本と、

なんとchelmicoの2人と言う意外な人選。

さすがに硬い感じだったが、途中で若きラジオスター、

アルコ&ピースの2人が加わってから面白くなってきて、

そこからのハライチ投入という流れだった。

 

TBSの24時台3兄弟(アルピー、ハライチ、うしろシティ)と、

ニッポン放送のcreepy、三四郎、佐久間さんはよく言えばユーティリティー

悪くいえばいいように使われている感じだが、

このようなスクランブル時には八面六臂の大活躍で、

ラジオを盛り上げている中心だ。

 

 

そして金曜、『三四郎 ANN』はゲスト菅田将暉

 

こちらもしゅーじまんこと相田がYoutubeチャンネルの企画で作ってリリースまでした曲、

『スタンバイ』に惚れ込んだ菅田が自分のアルバムに入れるため、

相田にお願いするという展開。

 

ん・・・、これって今までの展開となんだか似てる・・・。

ANNパーソナリティー同士をコラボ曲でつなげて、盛り上げるパターン。

 

まさかこれも予め狙ってやった企画!?

だとしたらなんと周到な計画。これを考えたスタッフはすごい。

最初から菅田将暉のアルバムに入る予定だったのかな・・・。

 


しゅーじまん『Standby』MV

 

 

そして私の1週間のラジオの大トリをかざるのは、『オードリーANN』。

 

ゲストは高橋ひかるさん。

私は存じ上げないタレントさんだったけど、最近ちょくちょく2人のトークの中で、

そのラジオフリークっぷりが話題になっていたので、

どんな人なのか気になっていた。

 

まだ19歳とのことだが、お笑いラジオを毎日聞いており、オードリーの大ファンで、

ボディビル鑑賞や料理など、好きになったらとことん追求するオタク気質とのこと。

 

終わった後アップされた写真を見たら、喋ってるイメージとは全然違う、

華奢な美少女でびっくり。

今はこんな子でもオタクって言えるんだ、オタクって市民権を得たよな、としみじみ思う。

 

 

こうしてみると、ANNは意図的にパーソナリティー同士のコラボレーションを仕掛けており、

盛り上がっている。

 

しかも菅田将暉とcreepyがミュージックステーションに出たり、

星野源がドラマ関連のゲストを出したりと、ラジオリスナーじゃないリスナーを

外から引っ張ってくることに成功していると思う。

 

今までのSPウィークやラジオ特番の企画は、ラジオファンに向けられた内向きなものが多く、

これじゃラジオファンは喜んでもラジオリスナーは増えないだろうな、

と思っていたけど、最近のANNはその辺特に意識して取り組んでるように感じる。

 

その点TBSのJUNKは少し遅れをとっているように思う。

レギュラーも軒並み10年以上やっており、個人的にはANNに勢いで負けていると感じる。

(つい2〜3年前まではJUNKの方が明らかに面白い、と感じていたが。)

 

今回もスクランブルな面白さがあったが、

それはいずれも田中、おぎやはぎの病欠によるもので、意図的じゃないし、

そんなところにも年齢を感じる・・・。

 

JUNKメンバーを刷新して欲しいとは思わないが、

JUNKとANN、鬩ぎ合って深夜ラジオをもっともっと盛り上げて欲しい。

 

 

 

他にも面白かった番組あるんだろうけど、スキマ時間でしか聞けないから聴ききれない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

【ワイルドサイドをほっつき歩け ーハマータウンのおっさんたち】ブーマーVSミレニアル、そのとき82年生まれは…

先日、オンライン英会話でフィリピン人講師とミレニアル世代の話題になりました。

 

私も講師もミレニアル世代。

 

お互いの国でミレニアル世代はどういう特徴があるか、

他の世代からどう見られているか、などについて話しましたが、

大体どこも同じだね〜と言うざっくりとした感想の中に、

互いの国特有の細かい違いがあったりして、

なかなか面白かったです。

 

 

 

ミレニアル世代は世界的には、

1980年〜2000年に生まれた世代のことを指すことが多いようです。

 

ミレニアル世代の世界的な特徴は、

デジタル=ネイティブで情報リテラシーが高い、

テロや不況の時期に育ったことで、物質的な豊かさよりも精神的な豊かさを求める、

ポリティカル・コレクトネスに敏感、などなど。

 

 

日本のミレニアル世代の中で、

後半の半分以上は「ゆとり世代」に属するので、(1987年生まれ以降)

ミレニアル世代≒ゆとり世代とする向きもあります。

 

 

ちなみに、フィリピンではミレニアル世代は、

 

fickle minded = 風見鶏(コロコロ言ってることが変わる人)

 

とよく評されるとのことです。

 

 

一方、日本の「ゆとり世代」も、

無気力、打たれ弱い、失敗を恐れる、空気を読んでばかりなど、

否定的な見られ方をすることが多いように思います。

 

特にゆとり世代リーマンショック後くらいまで続いた就職氷河期の後に

就職活動期を迎え、売り手市場の中で就職できたことから、

就職氷河期を経験した一つ上の世代、「ロスジェネ」世代からは疎まれがちです・・・。

 

と言うわけで日本では、

「ロスジェネ」世代 VS 「ゆとり世代」の世代間対立が

わかりやすいように思いますが、

このような世代間対立は微妙に年代や対立軸を変えて、

どの国にもあるようです。

 

 

 

そのことを面白おかしく、

しかしリアルに伝えてくれるのがブレイディみかこさんの新著、

『ワイルドサイドをほっつき歩け ーーハマータウンのおっさんたち』です。

 

 

 

 

この本でブレイディさんは、彼女が住むイギリスのブライトンを舞台に、

彼女の夫と主にその友人のおっさん達、ベビーブーマー世代の末路と悲哀、

特にポリコレに敏感で新自由主義的社会に適応している若い世代から、

粗大ゴミのように汚いものを見る目で見られつつ、

おっさんなりの筋の通し方や意地で、地べたを生きる彼らの生き様を、

優しく見守っています。

 

最終章はブライトンが生んだスーパースターDJ、Fatboyslimの名曲、

『Praise you』をタイトルに拝借しています。

 

私はこれらのおっさんの代表としてまさに、

EDMの波に押され、一時期の全盛期は静かに終わりを告げて、

今は人生の黄昏時を迎えているであろう、ノーマン・クックその人を思い浮かべました。

 

 

ところでこの本の第2章には英国の世代間対立事情が詳細に書かれていていました。

 

それによると英国ではとにかくベビーブーマー世代が、

EU離脱の賛成票を投じた主たる層、強欲で得ばかりしてきた世代、

などと子供世代であるミレニアル世代から突き上げられ、

それが今回のEU離脱選挙で一層深刻な分断を生み出したと言うのです。

 

ブレイディさんはこれを日本に置き換えると、

全共闘世代 VS  ロスジェネ世代に近いかも、と書いてます。

 

戦後の経済発展の恩恵を受け、豊かだった時代の社会や文化を謳歌した親世代と、

生まれた時から不況続きで、戦争やテロなど、戦後社会の行き詰まりの閉塞感の中で

育ってきた子供世代。

 

微妙に年代はずれてますが、日本も英国も(そして他の国も多かれ少なかれ)、

同じ問題があるのだなと思いました。

 

しかし英国の場合はEU離脱の投票によって問題が顕在化し、

断絶は一層深まっていて切羽詰まった状況になっています。

 

EU離脱票を投じた割合が最も高かったベビーブーマー世代を、

「裏切り者」「自分たちはブレクジットのダメージを見る前に死ぬくせに」などと責め、

ベビーブーマー世代は若者世代を、

「君たちは何がこの国にとって本当に良いことなのか分かってない」

などと譲らず、国を挙げての壮大な親子喧嘩状態。

 

そんな終わりの見えない果てしない世代間の争いの中で、

ブレイディさんが何か役割を果たせるかもしれない、

と期待しているのが間に挟まれた世代、ジェネレーションXです。

 

彼らは二ヒリスティックで冷めている、と言われがちだけど、

実際に今の社会、企業でも地域でも家庭でも、

実務の中心となっている世代です。

 

ベビーブーマー世代は過去に生きすぎて、未来を台無しにしようとしているし、

ミレニアル世代は未来を怖がりすぎて、過去を見ていない。

ジェネレーションX世代は過去に何があったか知ってるし、

時代の変遷をある程度見てきたものとして、

未来は作り変えることができると言うことを認識している。

 

言わば、「谷間の世代」だったジェネレーションXの存在が、

世代間対立の解決のための、鍵になるかもしれません。

 

 

 

そういえば私は1982年生まれ、

ぎりぎりミレニアル世代の先頭ということもできるけど、

ジェネレーションXの最後尾でもあるらしいです。

 

 

どうりで、どちらの世代の特徴や価値観も、

しっくりこないわけだ・・・。 

 

しかし、「谷間の世代」のさらに谷間に生きる私は、

どちらの世代にも共感するところがあります。

 

そうやってお互いの世代の良いところを取り入れながら、

両者の融和を図るのが、谷間の谷間世代の役割といったところでしょうか。

 

 

 

 

なんか調子いいやつみたいですね。

 

あ、だからfickle mindedって言われるのかな・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

極私的・平成の日本を代表する50曲

私は1982年生まれなので、平成元年の時、7歳。

そして平成が終わった時、36歳。

 

と言うことは私が聞いてきた音楽、

好きな音楽はほぼ平成の音楽ということになる。

 

ふと思い立って、私の個人的な好みによる、

平成の日本を代表する50曲を一気に選んでみた。

 

一般的な50曲、これを読んでる方の選ぶ50曲とは違っていると思うが、

それはご容赦願いたい。

 

 

その乖離にこそ、私の人生が滲み出ているのだから。

 

 

 

極私的・平成の日本を代表する50曲

 

さよなら人類/たま

物心ついて初めて好きになった曲。今見返すと危険さが伝わってくる。


愛のために/奥田民生

Hey×3を観て、民生と浜ちゃんの古着に憧れていた。


恋のマジックポーション/すかんち

これか天才テレビくんに使われてた『You You You』か迷った。

 

悲しみは雪のように/浜田省吾

ハマショーのように怒りや貧しさをストレートに歌う人って、今はいない。


世界が終わるまでは/WANDS

言わずと知れた、スラムダンクのED。


Alone/B’z

95年くらいまでのB'zは名曲揃い。


Love Train/TM network

TKサウンドの最高峰はTMNTRF


グロリアス/GLAY

GLAYの苦労話は好きでした。『REVIEW』は傑作アルバム。


悲しきASIAN BOY /The Yellow Monkey

初めて買ったシングルCD。もちろん短冊型。


Over drive /ジュディ・アンド・マリー

YUKIはもちろんのこと、TAKUYAも結構好きでした

 

僕の天使マリ/スピッツ

ロビンソンあたりでスピッツを知って、遡って知った名曲


Shangri-La/電気グルーヴ

多くのロック少年と同じく、電気を入り口にテクノを知った。

 

Candy house/Thee Michelle Gun Elephant

NHKーFM『ミュージックスクエア』でこの曲をはじめ、多くの名曲と出会った。

 

ガソリンの揺れ方/Blankey Jet City

高校時代はブランキーばかり聞いてた。ライブに間に合わず泣

 

いかれたBABY /フィッシュマンズ

いなくなってから知った。何にも似ていない、孤高の名曲。


今夜はブギーバック/小沢健二

この曲こそ90年代を代表する曲。あらゆる意味で。


Playboy playgirl/ピチカート・ファイヴ

田舎の中1だったので渋谷系の意味はわからなかったけど、(↓に続く)


プライマル/オリジナル・ラヴ

渋谷系の曲はなぜか心に引っ掛かった。そして今も聞き返している。


I’m knocking on the door/L⇄R

中学の時、初めて行ったカラオケで歌ったら意外と難しくて玉砕した。


サマージャム95/スチャダラパー

多くのロック少年と同じく、オザケンからのスチャダラでヒップホップを知った。


サマーヌード/真心ブラザーズ

これも95年!


今宵の月のように/エレファントカシマシ

この頃ポップジャムによく出ていたような気がする。


SHAKE /SMAP

ジャニーズ曲で唯一ランクイン。歌も踊りもこの頃のキムタクも大好き。


Innocent world/Mr children

ミスチルはあまり好きでは無いが、この曲の爽快さには抗えない。


歩いて帰ろう/斉藤和義

いつの間にか知って、じわじわ好きになった。


LADY MADONNA/LOVE PHYCHEDELICO

大学受験の帰りにCDを買って聴きながら帰った。3時間、ずっとリピートした。


Traveling /宇多田ヒカル

当時、ロッキンオンの山崎編集長もDJでこの曲を掛けてた。


ワンダーフォーゲル/くるり

なんだかんだで一番ライブを観たのはくるりかも。


Lucky/supercar

青森の宝物です。淳治の歌詞、文章も好き。


NUM-AMI-DABUTZ/ナンバーガール

会社員のような外見に衝撃。ダイナソーJrみたいな音楽をやっててさらに衝撃。


海行かば山ゆかば踊るかばね/ソウルフラワーユニオン

クラブスヌーザーでよくかかってた思い出の曲。


青春狂走曲/サニーデイサービス

失恋した時、唯一聴けた音楽がサニーデイ。曽我部さんの声に憧れてる。


Point of view point/Cornelius

東京した初めてライブに行ったのがコーネリアス。Tシャツも大事に着た。


Music Lovers/The Jerry Lee Phantom

これもクラブスヌーザーの思い出。


エイリアンズ/キリンジ

だいぶ後になってからハマった。当時は子供だったということか・・・


発光体/ゆらゆら帝国

ここからナゲッツなどのサイケガレージ沼にしばらくハマる


Rock And Roll(Will Never Die)/騒音寺

2008年頃、騒音寺を追いかけてライブハウスに通いまくっていた。

 

深夜高速/フラワーカンパニーズ

騒音寺のライブにケイスケさんが出てきた時、盛り上がったなあ。


若者のすべて/フジファブリック

フィッシュマンズは誰も似てないと書いたけど、私の中ではちょっと似た存在。


高嶺の花子さん/Back number

自分ごととしてはもう聴けないけど、それはそれとしていい曲。

アルクアラウンド/サカナクション

フジロックで初めて観て、久々に衝撃を受けた。その後全曲聞いた。


肉体関係part2 逆featuringクレイジーケンバンド/RHYMESTER

歌詞もPVも最高。宇多丸さんのラジオもよく聞いた。


たりないふたり/creepy nuts

令和の、ヒップホップ版の、電気グルーヴだと思う。イノベイター


SUN/星野源

この曲で星野源のことも、ブラックミュージックのこともグッと好きになった。


明日も/SHISHAMO

意外とどハマりした。ストレートに元気がもらえる曲。


(Love is like a)Heat Wave/The Learners

チャーべさんのコンセプト、マリーさんのルックス、最高なバンドだ!


台風銀座/台風クラブ

最近インディーロックはほとんど聴いてないが、それでもこのバンドには心惹かれた。


Summer Soul/cero

ceroは次世代のYMOと言ったら言い過ぎ?だって3人とも天才だし。


KAWASAKI DRIFT/BAD HOP

こんなリアルでストレートな曲、もうロックには無い。サウンドにも声にもシビれる。


LEMON /米津玄師

平成を締めくくるにふさわしい、大名曲。紅白見て感動したの初めて。

ミュージシャンの書く文章にはリズムとメロディがある。 私のお勧めする「音楽本」5選。

音楽本を読むのが大好きだ。

  

音楽本といっても、いろいろな本があると思うが、

私の興味範囲の音楽本を大まかに定義すると次のようになる。

 

 

①ミュージシャンが書いた、自伝、または音楽に関する本

②ミュージシャンが書いた、音楽とは関係ないジャンルの本


③ミュージシャンじゃない人(ライター、裏方含む)が書いた、音楽に関する本


④ミュージシャンじゃない人(ライター、裏方含む)が書いた、

音楽とは関係ないジャンルの本

 

※音楽のジャンルはPOPS、ロックが多いですが、特に問わない。

※スコアや楽譜、楽器の教則本などは今回の定義からは外す。

 

 

④はもはや音楽本とは言えないかもしれないが・・・。

 

 

 

書店の本棚に一番多いのは③ではないだろうか。

音楽批評家の評論や、ディスクガイド的な本も含まれるので、種類も数も多いと思う。

 

ライターや批評家の人たちは文章を書くのが本業であるので、

文章がうまいのは当たり前だし、資料的価値がある本も多く、

③のカテゴリーは当たり外れが少ない印象がある。

 

 

しかし、今日私が推したいのは①のカテゴリー、ミュージシャンが書いた本だ。

 

 

なぜなら、ミュージシャンの人生は一般人と比べて山あり谷あり、

普通の人生では体験しないようなことをたくさん経験してきた人が多く、

そもそも書いてるネタが面白い。

 

さらに、ミュージシャンは文章を書くことが本業ではないが、

日々、作詞を通じて言葉と向き合っているからか、

またはメロディやリズムに敏感だからか、

本当に独特な、その人だけが持つ個性的なリズムの文体を持っている方が多く、

それこそが私が①カテゴリーの音楽本の最大の魅力だと私は思う。

 

 

そんな私が愛してやまない①カテゴリーの音楽本を何冊か紹介する。

 

 

小西康陽『これは恋ではない 小西康陽のコラム1984−1996』

 

私が思うに、日本のミュージシャンで一番の名文家は小西康陽さんである。

まさに小西さんのDJのように、都会的で、洒脱でスムーズだが、

時々聞き流すことの出来ないフックが随所に挟み込まれている文体。

 

そして語られていく愛するものたちへのフェティッシュなこだわり。

レコード、名画座、女性、バー、etc・・・

 

植草甚一片岡義男山口瞳小林信彦といった、

粋な都会人的な昭和のエッセイの名手たちの系譜は、

実は小西さんにこそ引き継がれていると思う。

 

このバラエティ・ブック3部作は3冊とも、

とにかく日記もエッセイもショートストーリーも、全てが抜群に面白いが、

後半段々人生の孤独感や寂寥感がに滲み出てきて、

それがご本人の今の気分なのか、少し暗い印象になっていくのに対し、

1冊目のこの本はまだ華やかな都会ライフが描かれていて、

まるでピチカート・ファイヴの歌詞みたいだ、と思ったり。

 

 

 

 

 

 横山剣『マイ・スタンダード』

 

独特のリズムとメロディが備わった、

ミュージシャンならではの個性的な文体という点において、

クレイジーケンバンドのボーカル・横山剣さんの右に出るものはいない。

 

彼の思い出話の中に出てくるディテールの喚起力は凄まじい。

例えばこんな一文。

 

 

 

かつて本牧の街が目を覚ますのはィ夜の深い時間だった。

本牧通りに夜がくれば、VFW、IG、IG-Annex、

山手署の交差点を小港橋方面に進めば、

リキシャ・ルームといった老舗のナイトスポットが

深海の発光体みたいな淡く儚い光をポワーンと放ちながら

幻影のように浮かんでる。

なんだか現実味が全くないんだ。

 

それとは対照的に、通りの反対側のディスコ・リンディーのネオンだけが、

まるで返還前の沖縄ゴザの歓楽街みたいなギラギラで絶倫な光を放っていた。

 

 

 

 

こんな描写がそこら中に溢れている。

剣さんの文章は固有名詞やディテールの列挙に執拗にこだわることで、

単なる事実や出来事の記録ではなく、

むしろその時、そこに流れていた空気感、質感を捕まえ、立ち上がらせることに見事に成功している。

 

あの独特な話し方とも全く別の、オリジナルな文体で語られる本牧、原宿、六本木・・・

 

一度読んだら病みつきになってしまう、そんな中毒性の高い文章だ。

 

 

 

クレイジーケンズ マイ・スタンダード

クレイジーケンズ マイ・スタンダード

 

 

 

 

 

菊地成孔菊地成孔の粋な夜電波』

 

これはシリーズでもう何冊か出ているが、

TBSラジオで放送されていた同名のラジオ番組で菊地さんが喋った内容を、

ほぼそのまま文章にした本だ。

 

だから厳密には菊池さんが書いた文章では無い。

菊池さんは他にも数多くの著作があり、そちらの文章も大変面白いのだが、

なぜこの本を取り上げたかというと、私はこの本を読んで驚いたからだ。

 

当初、この本は菊池さんが話した言葉であり、書いた言葉では無いので、

ミュージシャン独特の文体を愛好する私はそれほど期待していなかった。

 

このラジオ番組が好きだったので、聞き逃した回のエピソードが読めればなあ、

ぐらいの気持ちで買ったのだが。

 

しかし、私の低い期待に反して、この本は本として、抜群に面白かった。

 

つまり、話し言葉を書き起こしているだけなのに、

ミュージシャンの独特な文体として十分に成立していた。

 

失礼ながらこのラジオ番組での菊地さんは、

思いつきというか適当というか、

与太話のような風情でいつも話しているので、

それを書き起こしたときにこんなに個性的で

読み応えのある文章になるとは思いもしなかった。

 

文字で読んでも面白いことを、

あんな思いつきのようにペラペラと話していた菊地さんの凄さを実感した。

 

言文一致とでもいうのか、 

言葉に身体性があるというか、

むしろ菊地さん自体が言葉で出来ているような、

そんな稀有な人です。

 

 

 

 

 

村上”ポンタ”秀一『自暴自伝』

 

言わずと知れた日本を代表するドラマーであり、

70年代から数々の名曲に参加してきた、セッションミュージシャンのポンタさん。

 

この本はそんなポンタさんの伝説の名曲、名盤への華麗なる参加遍歴と、

豪快すぎるキャラクターと逸話の数々を存分に堪能できる自伝だ。

 

ポンタさんの一切立ち止まることなく、

あらゆるものをなぎ倒して前に進むような半生を通じて、

はっぴぃえんど、シュガーベイブユーミンと盛り上がっていく70年代のニューミュージック、それらの人材が楽曲を提供した80年代のアイドルブームの隆盛と、

当時の興奮が臨場感を持って伝わってくる。

 

全盛期は都内のスタジオを1日何軒もはしごして走り回っていたという

ポンタさんの後ろについて回って、

数々の伝説の名曲のレコーディングに立ち会った気分になれる一冊だ。

 

 

自暴自伝 (文春文庫PLUS)

自暴自伝 (文春文庫PLUS)

 

 

 

 

和嶋慎治『屈折くん』

 

青森が誇る、知る人ぞ知るロックバンド、人間椅子のギター&ボーカル、

和嶋慎治さんの自伝。

 

あの文学的な歌詞の世界観、ブラックサバスのようなヘヴィなギターサウンド

たびたび挟み込まれる津軽弁の語りやMC、白塗り坊主の鈴木さん ・・・。

 

強烈すぎる個性はどのように形成されていったのか?

 

意外にも和嶋さんは弘前の旧家の長男で、

ボンボンであることに子供の頃から悩んでいたという。

 

そんな自意識のねじれと歪みがひねくれにひねくれて、

ロックバンドとして昇華されていくところがこの本の白眉だが、

和嶋さんの場合はそれだけじゃ終わらない。

 

青春が過ぎた40代になっても50代になっても延々と悶々としていて、

徹夜で飲んだくれた後、高円寺の片隅で倒れてしまい、泣いたりしている。

 

しかしそんなねじれまくった自分の半生を記述する、

書き手としての和嶋さんは冷静だ。

一筋縄ではいかない男の自意識の転がっていく様を、結構淡々と書いている。

 

そこがこの本の文体に独特さを生み出し、味わい深いものにしている。

 

 

屈折くん

屈折くん

  • 作者:和嶋 慎治
  • 発売日: 2017/02/09
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

 

 

まだまだたくさん紹介したい本があるし、③のミュージシャンじゃ無い人が書いた音楽の本も面白い本がたくさんあるので、機会があればそのうち書きたい。